書籍レビュー

【本】「ボクたちはみんな大人になれなかった」小さく輝く言葉を、大事に抱いていたくなる本。

どうも、よつばくま(@yotsubakuma)です。

一読して、しみじみと余韻に浸り続けていた本があります。今、すごく売れている本です。

うまく感想にできない気がしていて、それでも書いておきたくて、ようやく言葉にしてみようと思いました。

1999年の記憶がある人も、ない人も、感じることができる普遍の感情がある

今回読んだ本は、燃え殻さん(@Pirate_Radio_)の「ボクたちはみんな大人になれなかった」です。

(本来、作者に「さん」はつけないのかもしれませんが、あえて「さん」をつけたいと思います)

 

発売後、本屋さんで直接手に取って買ってきました。最近、本は本屋さんでできるだけ買いたいなあと思っています。

その日ラスト1冊でした。

紙の本って、いいですよね。

わたしは、小説やエッセイなど「読み物」としての本は、表紙や中身の紙の質感や、装丁のデザイン、文字の種類など、すべてを含めて「作品世界」だと思っています。

「ボクたちはみんな大人になれなかった」も、タイトル文字から表紙のデザイン、目次のデザインまで、この作品の世界観が溢れていて、とても素敵だと感じました。

この作品は、現在40代の燃え殻さんご自身の私小説です。

現代を生きる主人公と、青春時代を送っていた1999年のふたつの時代の東京の街が舞台。

登場人物たちの生き方や、社会の様子なども描かれているのですが、ベースにあるのは、今の主人公が「忘れることのできない」、青春時代に付き合っていた恋人の話です。

こうした、誰かを想う心の痛みや、失われてしまった過去の思い出への感傷は、世代関係なく、感じることができるものだと思います。

わたしは1999年に小学校6年生。当時話題になっていたノストラダムスについて、友だちと家庭科の授業中、被服室で「どうせなら恐怖の大魔王じゃなくて、お金が降ってきたらいいのにね~」とのんきに話すような子どもでした。

だから、この主人公と同じ時代を生きているわけではありません。さらに、大阪で育っているので、東京の街並みも、地名だけでリアルに想像できるわけでもありません。

でも、主人公が感じる気持ちや、ヒリヒリした痛みは、自分のもののように迫ってきて、心を震わせました。

世代・男女関係なく、震える人は震える。そういう作品です。

 

過去の恋、どうやって保存していますか?

過去の恋愛って、今の自分に、どのような形で残っていますか?

今日、こんな記事がTwitterで流れてきました。

これに、女性の中には、大いに反発心を抱く人もいるそうです。(まあ、そういう人も多いでしょう)

過去の恋愛や好きになった相手を、「男は名前を変えて保存」、「女は上書き保存」というようにたとえられることがあります。

男性の方が、過去の人や恋愛を大事に抱いていて、女性はキレイスッキリさっぱり、ということですね。

でも、わたしはそういうタイプではなく、「名前を変えて保存」タイプ。だから、この記事の言わんとすることはよくわかったし、愛しいなあとすら思ったのです。

 

遊んでばかりで、相手と真摯に向き合ってこなかった人の恋愛遍歴には、興味もないし、「ああそう」としか思えないし、むしろそれが自分の相手なら不安になるのではないかと思います。

でも、そうではなくて、そのときの相手に、本気でぶつかっていた。本当に好きで、苦しんで、みっともなくて、格好悪くて、それくらい、相手のことが好きだった。

そういう経験をしている人の過去の恋愛は、とても素敵な出来事だと思う。

そうした甘さや苦みを経て、その人は、今のその人になっているのだと思う。だから、その想いは、大事に抱えていていいものだと思うのです。

なお、私には元彼はいませんが、過去に好きになった人たちのことは、今でもずっと大事に想っています。

それくらい誰かを好きになれた自分自身を誇りに思っているし、彼らが今、幸せであってくれたら嬉しいなあと想っています。

「今」は永遠じゃないことをもう知っているから、「うれしい時に、かなしい気持ちになる」

燃え殻さんが綴る言葉や語り口は、感情の振り幅が決して激しくなく、淡々としていて、静かです。

でも、その静かさが、心にしんと沁みいります。肌の奥で、疼いている傷跡に、滲みる消毒液のような文章だと感じました。

きっと、どこかに、それぞれにとって「滲みる」文章があるのではないかなあ。

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わたしが「滲みる」言葉のひとつが、「うれしい時に、かなしい気持ちになる」です。

まさに、わたし自身がそうだから。その感情が、とてもよくわかるから。

まだまだあるのだけれど、それはぜひ、読んで、出会ってほしいなあと思います。出会った言葉を、きっと大事にしたくなる、はず。