書籍レビュー

【本】「十二人の死にたい子どもたち」レビュー

「十二人の死にたい子どもたち」を読みました。どうも、よつばくま(@yotsubakuma)です。
クリスマスイブに何てタイトルの本を読んだんだろうか…。(笑)

冲方丁作品は初めてでした。

そもそも、冲方作品でこちらの作品は初の現代を舞台にした作品なので、これだけを読んで「読んだことある!」とは到底言えないのですが。

直木賞にノミネートされたようなので、一歩先に予約していて良かった!と思っています。
一気に予約数跳ね上がるよね……きっと。

2018年12月23日追記:ついに実写映画化もされますね。

ネットを介して廃病院に集まった死にたい十二人の子どもたち

舞台は倒産した病院。

自殺したいという思いを抱いた子どもたちが一室に集まります。

死ぬためのルールは、あらためて全員で採決を取り、賛成に全員が一致すること
一人でも反対を上げるうちは、話し合いを続けることになります。

一室に集まった子どもたちには、1つ大きな問題が浮上していました。

さて、その問題をどう解消する?

果たして全員一致で死ぬことはできるのか? それとも断念か?

……という、物語です。

登場人物が多い上に、会話が中心のため、小説を読み慣れていない場合、頭が混乱する人もいるかもしれません。

でも、登場人物自体は個性が強いので、一旦個性と名前が紐付けできれば、読みやすい小説だと思います。
普段読まない人は「分厚い!」と思う方もいるかもしれませんが、サクサク読めますよ。

※ここから先は、多少あらすじ程度のネタバレを含みます※

廃病院に集まるはずだったのは全員で十二人のはずだったわけですが、なぜかすでに1人の少年がベッドに横たわっていました。

初めは1人が先走ったんだろうと思っていたところに、最後の1人が現れたことで、「こいつは誰だ?」と決行の意志が揺らぎます。

結果、初めの採決では1人が躊躇して反対に回ります。

「無関係かもしれない彼と同室で死んでいいのか?」
「彼の殺人罪を自分たちが被ることにはならないか?」
「そもそも、この十二人の中に犯人がいるのではないか?」

「だとしたら、そいつは誰だ?」

……このように、1つの引っかかりからさまざまな迷いが生まれ、十二人はぶつかり合うことになります。

何度も採決を取りますが、なかなか全員一致には至りません。
むしろ、1人だけだった反対票が増えてすらいきます。

その中で、なぜ自分は死にたいのか、なぜこの場に来たのかを、それぞれが語り始めます。
その内容が、十二人の中で相反している人も。
(自分に掛けられている保険金を残したくないから死にたい人、残したいから死にたい人など)

中には、非常に「軽い」としか思えない理由の人もいて、時には相手を否定しながらも、全員が真剣にぶつかり合います。

持ち時間制を導入して採決、話し合いを繰り返し、とうとう最後の時間がやってきます……。

さて、子どもたちの下した結論は?

※ここから先は、結末までのネタバレを含みます。読了後の方はどうぞ※

Have a nice day!

 

 

個性も考え方も全然異なる十二人

登場人物の十二人は、育った環境も、性格も、「死にたい」と思った理由も、まったく違います。

辛いなあ、と同情したくなるような人物もいれば、「いや、甘すぎるだろ」と感じる人物もいました。

中に出てくる1人、メイコがちょっと自分自身のイヤなところを見せられているような気持ちになって「うぐわああ」となりました……。
長いものに巻かれながら、ターゲットを定めたら俄然勢いを持って相手に敵意を向けるような女子です。

私は常に長いものに巻かれたいというタイプではないですが、学生時代は、自分の不利益になると判断した場合は、その場にいる「長いもの」に巻かれとけ!という側面があったことは否定できません。

また、人当たりは良いタイプだと自分では思っていますし、実際友人からもそう見られていますが、「敵!」と判断した途端、引くくらい冷酷になれる自分の内面も持っています。

逆に、そんなメイコを白けた視線で見ている女子も描かれていますし、数年前に「スイーツ」と揶揄されていたような女子も描かれています。

作者は男性ですが、そういう女の面がなかなかリアルだな……と思いました。

最後、オチでもある、十一人が「えっ、ついてけない…」となる1人の思考回路は、私も「えっ」となりました。
「うまくまとめた!」と思うか、「え?そういう展開?」と思うのか、どう捉える人が多いのかなあ。

ラスト、管理人が今まで何度もこのような会を開いていること、そのたびに結末は「中止」となることが明かされます。

その展開は予想できましたが、それでも本人は「自殺を止めたい」と思っているわけではなく、「もし全員一致で死ぬことになったら、そのときは自分も参加者として死ぬ」と考えているところが、薄ら寒かったです。

10代~20代初めまで、私も「死にたい子どもたち」の1人でした。
そのときの自分が読んだら、どう感じたかな、と考えながら読み終えました。